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国民対話シンポジウム
「カーボンプライシングとエネルギーマネジメント」

2018年10月26日(於 早稲田大学 WASEDA NEOホール)

環境経済・経営研究所(RIEEM)は、10月26日(金)に早稲田大学日本橋キャンパスWASEDA NEOホールにて、昨年に続き国民対話シンポジウムを開催しました。

当研究所は、2017年度より環境省委託研究の環境研究総合推進費【2-1707】「カーボンプライシングの事後評価と長期的目標実現のための制度オプションの検討」(以下、推進費プロジェクト)の助成を受けています。今回のシンポジウムは、同プロジェクトの研究成果を一般国民に報告することを目的に「カーボンプライシングとエネルギーマネジメント」と題して開催されました。当日は107名の方々に参加いただき、大盛況となりました。市民向けシンポジウムということで、環境経済政策学会の市民公開講演会支援制度の助成を受けて開催されました。

はじめに、環境再生保全機構の宇仁菅伸介様より開会のご挨拶を頂戴し、有村俊秀所長(同プロジェクト代表)よりシンポジウムの概要説明およびプロジェクトの紹介が行われました。

次に、東京大学の高村ゆかり教授より、「パリ協定とエネルギー転換」と題してパリ協定以降の世界のエネルギー動向とともにカーボンプライシングの役割について基調講演を行っていただきました。

その後、推進費プロジェクトの研究成果について、7サブテーマのうち4つについて報告がありました。
はじめに早大・鷲津明由教授から「地域の消費と電気:エネルギーシステムを知ろう!」と題して、カーボンプライシング実施に向けた環境整備としての電力システム改革(広域化)を評価した研究成果の報告がありました。
次に、獨協大学の浜本光紹教授から「企業は埼玉県の排出量取引にどう対応したか」と題して、埼玉県の排出量取引制度が企業に対する排出削減インセンティブとして効果があったことが実証研究の成果として報告されました。
さらに、地球環境戦略研究機関の小嶋公史氏から「カーボンプライシングは一石二鳥?欧米の先進事例より」と題して、欧米を中心とした事後評価研究を紹介しながらカーボンプライシングの有効性についての報告がありました。
最後に、当研究所の尾沼広基講師より「ここまで進んだオフィスビルの省エネ:排出量取引との関係?」と題して、東京都の排出量取引制度とオフィスビルにおける省エネ技術の導入状況の関係について報告がありました。

休憩を挟み、シンポジウム参加者との意見交換を含めて、パネルディスカッションが行われました。参加者からの質問は、当日配布した質問用紙に記入していただき、パネルディスカッションの中で時間の許す限り回答しました。

セッションの冒頭に、環境省の鮎川智一室長(地球環境局地球温暖化対策課市場メカニズム室)から「気候変動問題と経済・社会的課題とその解決に向けた世界の潮流」と題して、京都大学の諸富徹教授から、「日本経済の成長/産業構造転換とカーボンプライシング」と題してそれぞれ問題提起をいただきました。
そして、鷲津教授の司会のもと、鮎川氏、諸富教授、高村教授、浜本教授、小嶋氏に有村所長を交えてパネルディスカッションを行いました。

ディスカッションの第1ラウンドとして、エネルギーマネジメントなどのスマートテクノロジーを用いた「技術的ツール」と、カーボンプライシングなどの気候変動問題と社会の諸課題を同時解決していくための「政策的ツール」を両立していくことは可能なのかについて議論しました。
全体として、政策的ツールの導入が技術的ツールの促進を後押しするような仕組みが望ましいことを確認しました。
その上で、実際に政策を導入していくにあたり、諸外国や東京都・埼玉県の事例を参考にしながら、急激な変化を伴うものではなく段階的な実施も考慮していくことの必要性が指摘されました。

第2ラウンドでは、会場からの質問についてパネリストから返答が行われました。
すべてに回答することができないほど多くの質問が寄せられ、関心の高さが伺えました。
中心的な質問としては、国内制度の将来的な展望や経済との両立可能性に関するものであり、本推進費プロジェクトの重要性を再確認することができました。

最後に、青山学院大学の松本茂教授、早大・重点領域研究機構の谷藤悦史機構長の挨拶をもって、シンポジウムは盛況に終わりました。