関連リンク

環境経済・政策学会2017年大会にて、企画セッション(カーボンプライシング・プロジェクト)を開催しました。

2017年9月10日(於:高知工科大学)

環境経済・経営研究所は、9月10日の環境経済・政策学会2017年大会におきまして、環境省総合推進費「カーボンプライシングの事後評価と長期的目標実現のための制度オプションの検討」で進めている研究報告の場として企画セッションを開催しました。
本セッションでは、プロジェクトメンバーから3人が各サブテーマの研究内容を報告した上で、参加者から質問やコメントを受け入れて総合討論を行いました。

はじめに有村俊秀所長より、プロジェクトの紹介と本企画セッションの趣旨について説明を行いセッションが始まりました。

第1報告者の阿部達也氏(早稲田大学)による報告では、「東京都排出量取引制度の事後検証」について紹介しました。
この研究では、制度の対象になっている商業ビルと大学の排出量削減要因について計量経済学の手法を用いて分析を行い、制度の実施による削減効果があったことを示しています。

次に、第2報告者の杉野誠氏(山形大学)より、「カーボンプライシングによる産業への短期的な影響:2011年国内産業連関表を用いた分析」について報告がありました。
この研究では、まずカーボンプライシング導入による各産業の費用上昇率を計算して、その影響に偏りがあることを示しています。
その上で、費用上昇率の大きい産業に対する軽減措置を実施した場合の効果について検証し、軽減措置を受けた業種以外の業種にも恩恵があることを明らかにしています。

そして、第3報告者の武田史郎氏(京都産業大学)より、「日本のCO2排出規制の二重の配当:動学的な応用一般均衡モデルによる分析」について報告がありました。
この研究では、環境税を導入した場合に既存の税(所得税、法人税、消費税、社会保障負担等)を軽減することで二重の配当をもたらすかどうかについて、応用一般均衡モデル(CGEモデル)によるシミュレーション分析を行っています。
すべてのケースにおいて弱い二重の配当が成立し、法人税(資本課税)においては強い二重の配当が成立することを示しています。

セッションには40名を超える方々に参加いただき、3人の報告終了後、フロアから質問やコメントを受け入れて総合討論を行いました。
高知工科大学での開催ということもあり、経済学的な視点のみならず、工学など分野を超えた視点で議論を交わすことができ非常に有意義な機会となりました。

(報告:尾沼)